膵がんPANCREATIC CANCER
- 膵がん
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膵がんのリスク
特に、糖尿病、家族歴、画像における膵形態異常の3つは重要
- 家族歴
- 遺伝性膵癌症候群
- 生活習慣(糖尿病、肥満)
- 膵疾患(慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵のう胞)
- 嗜好(喫煙、飲酒)
腹部エコーやCTにおいて、膵形態異常である “膵管拡張” や “膵臓内のふくろ” は膵がんを診断する重要な手がかりとなります。
①通常型膵がん
②粘液産生膵腫瘍
粘液産生膵腫瘍の管理方針
膵がん診療ガイドライン 2019
病歴・症状と簡単なエコー所見から精査に進む
- 臨床症状各1点
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- 黄疸
- 内視鏡で原意不明の上腹部痛・背部痛
- 家族歴各1点
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- 膵癌の家族歴
- 膵炎の既往各1点
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- 急性膵炎、慢性膵炎
- 糖尿病各1点
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- 初発発症
- 急速な悪化
- 血液検査各1点
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- 肝胆道酵素上昇
- 膵酵素上昇
- 腫瘍マーカー高値CEA.CA19-9高値
- エコー検査各2点
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- 膵管拡張
- 膵のう胞
- 膵石灰化
- 膵腫瘍
- 描出不良
Sakamoto et al. Oncology 2017
2点以上 に該当して精査した場合 → 11%に膵がん確定
まずは年1回程度の 腹部エコー を施行しましょう。
膵臓はエコーで“死角”になることも多く、必要に応じて造影CTを組み合わせます。感度 特異度 エコー 76% 75% CT 91% 85% MRI 84% 82% J Comput Assist Tomogr 2005
糖尿病は常に、そして特に、膵がんの発生を意識する必要があります。
糖尿病と言われたけど、“親戚にも糖尿病はいない”“もともとやせていたけど、最近また更にやせたかな。
糖尿病発症時に、膵がん併存を予測する項目
- 必須
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- 糖尿病家族歴がない
- いずれか1つ以上
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- 65歳以上
- 体重減少2kg以上
- 発症前BMI 25未満
J Clin Gastroenterol:2012
必須項目と他1つ以上の項目が該当する場合 → “膵臓がん”
[感度] 80.8% [特異度] 67.6%腹部エコー
2型糖尿病で、当院に転医された患者さんです。紹介元で1度も腹部エコーをされたことがなかったのですが、糖尿病の基本管理とおり定期腹部エコーにて、診断された“通常型膵がん”の症例です。
背景疾患に、“糖尿病”がある場合は、常に新規“膵がん”発生を念頭において、外来観察する必要があります。
この症例では“膵がん”腫瘤が、生存に重要な“門脈”と“上腸管膜動脈”に近接しており、根治切除できるかどうかぎりぎりの患者さんです。切除できなければ、近代の医学においても予後は極めて不良です。造影CT
肝転移を伴った膵体尾部がんです。原発巣は、脾動脈が浸潤を受け、後腹膜RPに浸潤しています。
粘液産生膵腫瘍の管理方針
粘液産生膵腫瘍 - 主膵管型
手術適応
- 主膵管径10mm以上
- 壁在結節
- 黄疸
粘液産生膵腫瘍 - 分岐型
粘液産生膵腫瘍混合型の造影CT
“粘液産生膵腫瘍混合型”のMRI
腫瘍が産生した粘液によって膵液排出が悪くなり、主膵管が著明に拡張しており、分岐膵管の拡張も伴っている。
膵腫瘍の治療
基本的には、膵がんは根治切除を中心に検討し、補助的に化学療法や放射線療法を検討します。
膵がんと同様に、粘液産生膵腫瘍主膵管型も、まずは切除を考えます。
一方、粘液産生膵腫瘍分岐型は、形態や経過から将来がんに至るリスクを層別化して予測、経過観察も選択肢として対応することになります。偶然診断できた…初期通常型膵がん
膵がんは、 がん死亡原因のトップ5 に入る、言わば誰でもなりうる疾患です。たとえ症状がなくても、年1回程度の腹部エコーをしていたほうが良いでしょう。