
糖尿病DIABETES
糖尿病の原因は、以下の3項目が関連して発病します。

- 糖尿病
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糖尿病有病者と糖尿病予備群は合わせて、本邦で約2,000万人いるといわれています。糖尿病は、①血管障害と②がん発症リスクの2つが増加して、患者さんにとっては非常に苦痛な合併症をもたらすため、早期診断とそれら合併症への監視が必要になります。一方だけ注視して診ていればよい、ということではなく、両者2方面を、常に観察する必要があります。
診断のきっかけとなるケースは以下
- 口喝、多尿の症状がある。
- 肺炎や蜂窩織炎などの感染症を発症した。
- 若い時に比較して、随分太った。
- 家族に糖尿病がいる。
- 高齢になれば、太ってなくても糖尿病の可能性が高まる。
- 空腹時血糖が100mg/dl以上。
診断は、
- 空腹時血糖126mg/dl以上
- 随時血糖あるいは糖負荷試験2時間後血糖値が、200mg/dl以上
のいずれかです。
上記を満たさない場合でも、高血圧や高脂血症、肥満などある場合、もしくは空腹時血糖やHbA1cが微妙に高い場合は、糖負荷試験を行って、糖尿病かどうかを判定します。糖負荷試験によって、下記の如くグラフを作成して判定します。血糖値のピークが遅くて、180mg/dlを超えるような場合は、糖尿病の可能性が高くなります。
付け加えて、境界型糖尿病か?いわゆる“真”の糖尿病か? この区別にはあまり意味をもちません。どちらも同一延長線上にある疾患であり、将来的な合併症管理へのリスクヘッジ方針は変わりません。糖負荷検査の順序
負荷前と負荷後の血糖値により判定
空腹時の血糖値を測定します ブドウ糖を溶かした水を飲んでいただきます ブドウ糖を飲んだ後、数回に分けて血糖測定用の採血を行います 糖尿病の合併症
- 血管障害 小血管障害と大血管障害
- がん発症
血管障害
その① 小血管障害 通称“しめじ”
- “し”
- 神経障害 (し)
足の先端に知覚障害が発生し、最悪は下肢切断に至ることがあります。 - “め”
- 眼・網膜障害 (め)
視力障害が発生し、失明に至ることがあります。定期的に眼科で眼底評価を実施することが重要です。 - “じ”
- 腎障害 (じ)
尿検査による尿蛋白、血液中のクレアチニン量から腎血流量を評価します。進行すれば、血液透析や腹膜透析に至ることもあります。
その② 大血管障害 代表例として・・・心臓・脳・下肢の3つの血管
- 狭心症:無症候性に進行している可能性があります。定期的問診と、定期的な心機能評価で対応致します。
- 脳梗塞:麻痺や認知症の原因となります。定期的問診や頭部画像検索、頸動脈血流評価によって、対応致します。
- 閉塞性動脈硬化症:太もも近くの下肢大血管レベルから狭窄する病態です。下肢切断に至ることもあります。上記同様定期的問診や画像精査で対応致します。
糖尿病に合併する“狭心症と心筋梗塞” “無症候性心筋虚血”
2021年~日本循環器学会 日本糖尿病学会合同声明
糖尿病の心筋梗塞は症状がない!=胸部症状での早期発見は困難である!
如何に、早期発見するか?予測が重要である。予測
- 頸動脈血管エコー
- 単純CT
冠動脈の動脈硬化の程度を評価 冠動脈石灰化 Agatston score - 造影心臓CT
狭心症を早期に、外来で如何に見つけるか?
冠動脈疾患 症状はないが、現在の冠動脈石灰化から、未来の狭心症・心筋梗塞を予測する!
Blaha,et al. J Am Coll Cardiol Img.2017 無症状動脈硬化
中期 頸動脈エコー 頸動脈狭窄症例 進行期 単純CT 重症心筋虚血症例 進行期 造影心臓CT 重症心筋虚血症例 糖尿病患者は “がん予備群” です。
日本人糖尿病の死因の推移、死因第1位は?
もはや死因第1位は、“がん死”
時代の変遷で、死因の主は “脳卒中・心疾患” から “がん死” に逆転しました。> 医学雑誌:糖尿病2016年 日本人糖尿病患者の主たる死因~がんの内訳
糖尿病の死亡率第1位 合併症 “がん”
①肝・膵がん ②消化管がん ③乳がん当院ではエコー、内視鏡、CTを駆使して、更には近隣センター施設と連携して、予防に努めています。
PV:門脈 SMA:上腸間膜動脈 SpV:脾静脈 2型糖尿病で、当院に転医された患者さんです。紹介元で1度も腹部エコーをされたことがなかったのですが、糖尿病の基本管理とおり定期腹部エコーにて、診断された“通常型膵がん”の症例です。背景疾患に、“糖尿病”がある場合は、常に新規“膵がん”発生を念頭において、外来観察する必要があります。
この症例では“膵がん”腫瘤が、生存に重要な“門脈”と“上腸管膜動脈”に近接しており、根治切除できるかどうかぎりぎりの患者さんです。切除できなければ、近代の医学においても予後は極めて不良です。糖尿病診断契機に診断された、“膵がん”の1例です。
膵臓は臓器特性上、周囲に“生存に必須な血管が存在しており、進行した状態では、まず救命できません。糖尿病罹患患者さんでは、”膵がん“のリスクが高く、常に監視することが必要です。糖尿病は膵がんに注意!!
- 腹痛が最も多く、次いで黄疸・腰背部痛・体重減少などがみられる。
- 初発症状がないこともある。
- 3年以内の糖尿病(糖代謝障害)発症が約半数にみられる。
急激な糖尿病(糖代謝障害)の発症や悪化は、膵がん合併を疑い、検査を行う。特に糖尿病発症後3年は、注意を要する。
糖尿病は肝がんに注意‼️
糖尿病は脂肪肝を併発しやすく(代謝関連脂肪肝疾患=MAFLD)、肝線維化から“肝がん”を発症しやすいとされています。
糖尿病併存脂肪肝に、発生した肝がん
3大指標を常に意識して適正化する。
- HbA1c
- Time in Range~適正血糖内で過ごす“時間”を増加させる
- 低血糖の回避
HbA1cを考慮した血糖コントロール目標
“HbA1c”を使用した管理の“血管合併症予防”に配慮した指針 低血糖を回避しつつ、適正血糖範囲内で過ごす“時間”:Time in Rangeを増加させる。
血糖管理が困難な理由
- 食事摂取量と摂取時間の変化
“食べ過ぎた” “夜更かしして就寝直前に夕食をとった” - 運動量の変動
“いつものウォーキングできなかった” - 睡眠時間の変動
“遅くまで眠れなかった” - 心理的ストレス
“仕事や家庭的事情など...不安がある” - 投薬コンプライアンス
“服薬忘れ”が多い - 低血糖
“心血管リスクを上昇させる” 血糖コントロール指標の1つであるHbA1cが下がることは良いであるが、この低血糖が見逃されることもあるので注意する。
血糖測定の方法 2つ
- SMBG:Self Mnoitoring of Blood Glucose ~間欠的に血糖データを評価する
- FGM(リブレ®):Flush Glucose Monitoring ~連続的に血糖データを評価する
SMBG:Self Mnoitoring of Blood Glucose
~間欠的データから、連続データを推察しているに過ぎない。概して、良好な血糖推移にみえるが...
FGM(リブレ®):Flush Glucose Monitoring
~連続的血糖データが視覚化できる。心血管リスクに強力に関連する低血糖と平均血糖変動幅- 低血糖やその可能性を視覚化
→ 予測・確認して投薬を修正 - 血糖変動とTime in Rangeを視覚化
→ 食生活や投薬を修正して、これを最大化することができる。
実際は...
・食後高血糖が発生している。
・深夜低血糖や深夜高血糖が発生している。- メリット その1
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食後高血糖(血糖値スパイク)の有無が確認できる。
動脈硬化の進行を早める「食後高血糖」の有無が確認できます。血糖トレンドで食後高血糖を確認できたら、食事の内容・量による血糖値への影響を修正することができます。 - メリット その2
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夜間低血糖や暁現象の有無が確認できる。
深夜帯から朝方にかけて、血糖値を上昇させるホルモンの影響に比べて、投与インスリン量が不足しているとき、血糖値が自然に上昇していく現象を“暁現象”といいます。夜間の血糖変動を把握することができれば、血糖コントロールを乱す夜間低血糖や暁現象の有無に気付くことができます。 - メリット その3
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HbA1c値だけではわからない「血糖コントロールの質」を把握できる。
HbA1c値が同じでも血糖変動の幅がより小さい場合を「質の良い血糖コントロール」といい、この方が合併症を起こしにくいとされます。HbA1c値だけ、あるいはSMBGなどの瞬間的血糖値でなく、持続的な血糖変動をみることができれば、「血糖コントロールの質」を確認して修正できます。血糖トレンドのイメージ
糖尿病治療薬の選択
下記の項目を総合的に視て、投薬を最適化します。
- 年齢 (若年か?高齢か?)
- 低血糖リスク
- 肥満・脂肪肝の有無?
- 心疾患のステージ
- 腎疾患のステージ
- 加齢に伴う生活活動度の低下と認知機能
- 医療コスト
血糖降下薬のポジショニングマップ
矢部大介,清野裕 Medical Pracitice28:133-139, 2011 シックデイ時の “経口血糖薬” の調整
食事量が不安定な時は、食直後に内服
薬剤 摂食量
50%以上摂食量
10~50%摂食量
10%未満ビグアナイド薬
メトグルコ®中止 中止 中止 SGLT2阻害剤
ジャディアンス®
フォシーガ®中止 中止 中止 αグルコシダーゼ阻害剤
セイブル®
ボグリボース®消化器症状があれば中止 中止 中止 スルホニル尿素薬・グリニド薬
アマリール®
グリミクロン®
シュアポスト®通常量 中止 中止 DPP-4阻害薬、GLP-1作動薬
トラゼンタ®
オゼンピック注®
ビクトーザ注®通常量 状況に応じて判断 中止 チアゾリジン薬
アクトス®通常量 中止 中止 シックデイ時の “インスリン” 調整法
食事量が不安定な時は、食直後に注射
インスリン 摂食量
50%以上摂食量
10~50%摂食量
10%未満超速効型/速効型
ノボラピッド®
ノボリン®通常量 半分 中止して速やかに再診 中間型/持効型
トレシーバ®
グラルギン®通常量
(低血糖時は適宜増減)半量 混合型
ノボラピッド30ミックス®
ノボリン30R®通常量 半分 中止して速やかに再診