糖尿病DIABETES

糖尿病
糖尿病
糖尿病

成因と病態 = “原因” と “現在”

  1. 成因 = 原因
    3分類あります。1型、2型、妊娠などの他の状態に伴う。ほとんどが2型です。
  2. 病態 = 病気
    どれくらいの重症度か?、どれくらい進んでいるか?一定以上病態が進めばインスリン補充が必要となります。

インスリンを必要とする程度を基準に、“インスリンが要らない→インスリン非依存状態”と“インスリンが要る→インスリン依存状態”で、まず2軸で分類します。

インスリン 依存状態/非依存状態
引用:日本糖尿病学会診断基準検討委員会:糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告, 糖尿病53:454, 2010より
  • 右向きの矢印は糖代謝の悪化、左向きの矢印は糖代謝の改善を表しています。
  • 破線部分は、その状態となることが少ないことを表しています。

インスリン 依存状態/非依存状態

  • インスリン依存状態
    生命の維持のために、インスリン注射が欠かせない状態。
  • インスリン非依存状態
    生命の維持のために、インスリン療法が必要ではない状態。
    インスリン療法が必要なこともある。

診断

診断のきっかけとなるケースは以下

  1. 口喝、多尿の症状がある。
  2. 肺炎や蜂窩織炎などの感染症を発症した。
  3. 若い時に比較して、随分太った。
  4. 家族に糖尿病がいる。
  5. 高齢になれば、太ってなくても糖尿病の可能性が高まる。
  6. 空腹時血糖が100mg/dl以上。

診断は、

  1. 空腹時血糖126mg/dl以上
  2. 随時血糖あるいは糖負荷試験2時間後血糖値が、200mg/dl以上

のいずれかです。
上記を満たさない場合でも、高血圧や高脂血症、肥満などある場合、もしくは空腹時血糖やHbA1cが微妙に高い場合は、糖負荷試験を行って、糖尿病かどうかを判定します。

糖負荷試験によって、下記の如くグラフを作成して判定します。血糖値のピークが遅くて、180mg/dlを超えるような場合は、糖尿病の可能性が高くなります。
付け加えて、境界型糖尿病か?いわゆる“真”の糖尿病か? この区別にはあまり意味をもちません。どちらも同一延長線上にある疾患であり、将来的な合併症管理へのリスクヘッジ方針は変わりません。

糖尿病
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の判定区分と判定基準
日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2016-2017, p.23, 文光堂, 2016
  1. IFGは空腹時血糖値110〜125mg/dLで、2時間値を測定した場合には140mg/dL未満の群を示す(WHO)。ただしADAでは空腹時血糖値100〜125mg/dLとして。空腹時血糖値のみで判定している。
  2. 空腹時血糖値が100〜109mg/dLは正常域ではあるが、「正常高値」とする。この集団は血糖病への移行やOFTT時の耐糖機能障害の程度からみて多様な集団であるため、OGTTを行うことが進められる
  3. IGTはWHOの糖尿病診断基準に取り入れられた分類で、空腹時血糖値は126mg/dL未満、75gOGTT2時間値140〜199mg/dLの群を示す。

糖負荷検査の順序

負荷前と負荷後の血糖値により判定

空腹時の血糖値を測定
空腹時の血糖値を測定します
ブドウ糖を溶かした水
ブドウ糖を溶かした水を飲んでいただきます
“血糖測定用の採血
ブドウ糖を飲んだ後、数回に分けて血糖測定用の採血を行います

合併症

血管障害とがん

糖尿病有病者と糖尿病予備群は合わせて、本邦で約2,000万人いるといわれています。糖尿病は、①血管障害②がん発症リスクの2つが増加して、患者さんにとっては非常に苦痛な合併症をもたらすため、早期診断とそれら合併症への監視が必要になります。一方だけ注視して診ていればよい、ということではなく、両者2方面を、常に観察する必要があります。

糖尿病の合併症
  1. 血管障害 小血管障害と大血管障害
  2. がん発症

血管障害

その① 小血管障害 通称“しめじ”

“し”
神経障害 (し)
足の先端に知覚障害が発生し、最悪は下肢切断に至ることがあります。
“め”
眼・網膜障害 (め)
視力障害が発生し、失明に至ることがあります。定期的に眼科で眼底評価を実施することが重要です。
“じ”
腎障害 (じ)
尿検査による尿蛋白、血液中のクレアチニン量から腎血流量を評価します。進行すれば、血液透析や腹膜透析に至ることもあります。

その② 大血管障害 代表例として・・・心臓・脳・下肢の3つの血管

  1. 狭心症:無症候性に進行している可能性があります。定期的問診と、定期的な心機能評価で対応致します。
  2. 脳梗塞:麻痺や認知症の原因となります。定期的問診や頭部画像検索、頸動脈血流評価によって、対応致します。
  3. 閉塞性動脈硬化症:太もも近くの下肢大血管レベルから狭窄する病態です。下肢切断に至ることもあります。上記同様定期的問診や画像精査で対応致します。

糖尿病に合併する“狭心症と心筋梗塞” “無症候性心筋虚血”

2021年~日本循環器学会 日本糖尿病学会合同声明
糖尿病の心筋梗塞は症状がない!=胸部症状での早期発見は困難である!
如何に、早期発見するか?予測が重要である。

予測

  1. 頸動脈血管エコー
  2. 単純CT 
    冠動脈の動脈硬化の程度を評価 冠動脈石灰化 Agatston score
  3. 造影心臓CT

狭心症を早期に、外来で如何に見つけるか?

狭心症を早期に、外来で如何に見つけるか?
冠動脈疾患
冠動脈疾患

症状はないが、現在の冠動脈石灰化から、未来の狭心症・心筋梗塞を予測する!

症状はないが、現在の冠動脈石灰化から、未来の狭心症・心筋梗塞を予測する!
Blaha,et al. J Am Coll Cardiol Img.2017 

無症状動脈硬化

中期 頸動脈エコー 頸動脈狭窄症例
中期 頸動脈エコー 頸動脈狭窄症例
進行期 単純CT 重症心筋虚血症例
進行期 単純CT 重症心筋虚血症例
進行期 造影心臓CT 重症心筋虚血症例
進行期 造影心臓CT 重症心筋虚血症例

糖尿病患者は “がん予備群” です。

日本人糖尿病の死因の推移、死因第1位は?
もはや死因第1位は、“がん死”
時代の変遷で、死因の主は “脳卒中・心疾患” から “がん死” に逆転しました。

日本人糖尿病の死因の推移、死因
> 医学雑誌:糖尿病2016年

日本人糖尿病患者の主たる死因~がんの内訳

糖尿病の死亡率第1位 合併症 “がん”
①肝・膵がん ②消化管がん ③乳がん

当院ではエコー、内視鏡、CTを駆使して、更には近隣センター施設と連携して、予防に努めています。

2型糖尿病で、当院に転医された患者さん
PV:門脈 SMA:上腸間膜動脈 SpV:脾静脈

2型糖尿病で、当院に転医された患者さんです。紹介元で1度も腹部エコーをされたことがなかったのですが、糖尿病の基本管理とおり定期腹部エコーにて、診断された“通常型膵がん”の症例です。背景疾患に、“糖尿病”がある場合は、常に新規“膵がん”発生を念頭において、外来観察する必要があります。
この症例では“膵がん”腫瘤が、生存に重要な“門脈”と“上腸管膜動脈”に近接しており、根治切除できるかどうかぎりぎりの患者さんです。切除できなければ、近代の医学においても予後は極めて不良です。

膵がん 膵がん

糖尿病診断契機に診断された、“膵がん”の1例です。
膵臓は臓器特性上、周囲に“生存に必須な血管が存在しており、進行した状態では、まず救命できません。糖尿病罹患患者さんでは、”膵がん“のリスクが高く、常に監視することが必要です。

糖尿病は膵がんに注意!!

急激な糖尿病(糖代謝障害)の発症や悪化は、膵がん合併を疑い、検査を行う。特に糖尿病発症後3年は、注意を要する。

糖尿病は肝がんに注意‼️

糖尿病は脂肪肝を併発しやすく(代謝関連脂肪肝疾患=MAFLD)、肝線維化から“肝がん”を発症しやすいとされています。

糖尿病併存脂肪肝に、発生した肝がん 糖尿病併存脂肪肝に、発生した肝がん
糖尿病併存脂肪肝に、発生した肝がん

3大指標を常に意識して適正化する。

3大指標を常に意識して適正化する。
  1. HbA1c
  2. Time in Range~適正血糖内で過ごす“時間”を増加させる
  3. 低血糖の回避

HbA1cを考慮した血糖コントロール目標

HbA1cを考慮した血糖コントロール目標
“HbA1c”を使用した管理の“血管合併症予防”に配慮した指針

低血糖を回避しつつ、適正血糖範囲内で過ごす“時間”:Time in Rangeを増加させる。


目標

高血圧と糖尿病

血圧も血糖も互いに、悪く関連して上昇しあう!
血圧が上がれば血糖も上がる!

Blood pressure lowering and risk of new-onset type 2 diabetes: an individual participant data meta-analysis
Nazarzadeh M et al. Lancet 2021

収縮期血圧を 5mmHg 下げれば、糖尿病発症リスクが 11% 下がる!
血圧を下げて、糖尿病も予防しましょう。

収縮期血圧
Nazarzadeh M et al. Lancet 2021

血糖管理が困難な理由

  1. 食事摂取量と摂取時間の変化
    “食べ過ぎた” “夜更かしして就寝直前に夕食をとった”
  2. 運動量の変動
    “いつものウォーキングできなかった”
  3. 睡眠時間の変動
    “遅くまで眠れなかった”
  4. 心理的ストレス
    “仕事や家庭的事情など...不安がある”
  5. 投薬コンプライアンス
    “服薬忘れ”が多い
  6. 低血糖
    “心血管リスクを上昇させる” 血糖コントロール指標の1つであるHbA1cが下がることは良いであるが、この低血糖が見逃されることもあるので注意する。
血糖管理が困難な理由

FGM/SMBG

リブレ AGP Report

血糖測定の方法 2つ

  1. SMBG:Self Mnoitoring of Blood Glucose ~間欠的に血糖データを評価する
  2. FGM(リブレ®):Flush Glucose Monitoring ~連続的に血糖データを評価する

SMBG:Self Mnoitoring of Blood Glucose
~間欠的データから、連続データを推察しているに過ぎない。

概して、良好な血糖推移にみえるが...

SMBG:Self Mnoitoring of Blood Glucose

FGM(リブレ®):Flush Glucose Monitoring
~連続的血糖データが視覚化できる。心血管リスクに強力に関連する低血糖と平均血糖変動幅

AGP Report
  1. 低血糖やその可能性を視覚化
    → 予測・確認して投薬を修正
  2. 血糖変動とTime in Rangeを視覚化
    → 食生活や投薬を修正して、これを最大化することができる。

実際は...
・食後高血糖が発生している。
・深夜低血糖や深夜高血糖が発生している。

メリット その1
食後高血糖(血糖値スパイク)の有無が確認できる。
動脈硬化の進行を早める「食後高血糖」の有無が確認できます。血糖トレンドで食後高血糖を確認できたら、食事の内容・量による血糖値への影響を修正することができます。
メリット その2
夜間低血糖や暁現象の有無が確認できる。
深夜帯から朝方にかけて、血糖値を上昇させるホルモンの影響に比べて、投与インスリン量が不足しているとき、血糖値が自然に上昇していく現象を“暁現象”といいます。夜間の血糖変動を把握することができれば、血糖コントロールを乱す夜間低血糖や暁現象の有無に気付くことができます。
メリット その3

HbA1c値だけではわからない「血糖コントロールの質」を把握できる。
HbA1c値が同じでも血糖変動の幅がより小さい場合を「質の良い血糖コントロール」といい、この方が合併症を起こしにくいとされます。HbA1c値だけ、あるいはSMBGなどの瞬間的血糖値でなく、持続的な血糖変動をみることができれば、「血糖コントロールの質」を確認して修正できます。

血糖トレンドのイメージ
血糖トレンドのイメージ

治療

糖尿病治療薬の選択

下記の項目を総合的に視て、投薬を最適化します。

  1. 年齢 (若年か?高齢か?)
  2. 低血糖リスク
  3. 肥満・脂肪肝の有無?
  4. 心疾患のステージ
  5. 腎疾患のステージ
  6. 加齢に伴う生活活動度の低下と認知機能
  7. 医療コスト

インスリンとGLP1

血糖降下薬のポジショニングマップ

低血糖リスク 体重
矢部大介,清野裕 Medical Pracitice28:133-139, 2011

2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム

安全な血糖管理達成のための糖尿病治療薬の血糖降下作用・低血糖リスク・禁忌・服薬継続率・コストのまとめ―本邦における初回処方の頻度順の並びで比較一覧

インスリンの絶対的・相対的適応

薬物療法開始後は、およそ3ヵ月ごとに治療法の再評価と修正を検討する

目標HbA1cを達成できなかった場合は、病態や合併症に沿った食事療法、運動療法、生活習慣改善を促すと同時に、STEP1に立ち返り、薬剤の追加等を検討する

考慮する項目 DPP-4
阻害薬
ヒグアナイド薬 SGLT
阻害薬
SU薬 α-グルコシターゼ阻害薬 チアゾリジン薬 グリニド薬 GLP-1
受容体作動薬
イメグリミン
血糖降下作用
(要領依存性あり)
食後高血糖改善
(肥満者では効果大))
食後高血糖改善
低血糖リスク
(単剤において)
体重への影響 不変 不変〜減 不変 不変
腎機能 一部の腎排泄型薬剤では減量要 腎障害例では
減量要
重篤な腎機能障害では禁忌
重篤な腎機能障害では効果なし 要注意
(低血糖)
重篤な腎機能障害では禁忌 要注意
(低血糖)
エキセナチドは重篤な腎機能障害では禁忌 eGFR45ml/min/1.73㎡未満には非推奨
肝機能 ビルダグリブチンは重篤な肝機能障害では禁忌 重篤な肝機能障害では禁忌 重篤な肝機能障害では禁忌 重篤な肝機能障害では禁忌 要注意
(低血糖)
重度肝機能障害のある患者での臨床試験なし
心血管障害 心筋梗塞など循環動態不安定な症例では禁忌 重症低血糖のリスクに特別な配慮が必要
心不全 一部の薬剤では心不全リスクを高める可能性あり 禁忌 禁忌
服薬継続率
(特に週1回製剤)

(消化器症状など)

(頻尿、性器感染症など)

(体重増加、低血糖など)

(服用法、消化器症状など)

(浮腫、体重増加など)

(服用法、低血糖など)

(注射、服用法、消化器症状など)

(消化器症状)
コスト 中〜高

(横スクロールできます)


シックデイ

シックデイ時の “経口血糖薬” の調整

食事量が不安定な時は、食直後に内服

薬剤 摂食量
50%以上
摂食量
10~50%
摂食量
10%未満
ビグアナイド薬
メトグルコ®
中止中止中止
SGLT2阻害剤
ジャディアンス®
フォシーガ®
中止中止中止
αグルコシダーゼ阻害剤
セイブル®
ボグリボース®
消化器症状があれば中止中止中止
スルホニル尿素薬・グリニド薬
アマリール®
グリミクロン®
シュアポスト®
通常量中止中止
DPP-4阻害薬
トラゼンタ®
通常量中止中止
GLP-1作動薬内服
リベルサス®
中止中止中止
GLP作動薬注
オゼンピック®
トルリシティ®
ビクトーザ®
通常量通常量中止
チアゾリジン薬
アクトス®
通常量中止中止

シックデイ時の “インスリン” 調整法

食事量が不安定な時は、食直後に注射

インスリン 摂食量
50%以上
摂食量
10~50%
摂食量
10%未満
超速効型/速効型
ノボラピッド®
ノボリン®
通常量半分中止して速やかに再診
中間型/持効型
トレシーバ®
グラルギン®
通常量
(低血糖時は適宜増減)
半量
混合型
ノボラピッド30ミックス®
ノボリン30R®
通常量半分中止して速やかに再診
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