腎臓KIDNEY
以下のような事がありませんか?
- 検診で尿蛋白や尿潜血などの異常を指摘された
- 腎機能障害を指摘された
- 尿が濁っている
- 足が浮腫んでいる
早目に医療機関へ相談しましょう。
- 腎臓病
-
浮腫や血尿の症状が出現したり、検診で下記の代表3項目を契機に診断されます。
- 尿蛋白
- 尿潜血 or 肉眼的血尿
- 腎血流低下 = eGFR低下
腎臓病が進行して腎臓の働きが低下した状態を腎不全といい、回復する場合がある急性腎不全と回復する見込みのない慢性腎不全に大別されます。維持透析や腎移植に至ることもあります。
腎臓病の原因疾患
クリニックで診療可能な糖尿病由来の“糖尿病性腎症” 高血圧由来の“腎硬化症” として経過が合うか?が重要です。
経過が合わなければ専門施設※に紹介となります。腎臓病の診断あるいは経過観察中の注意点
- 腎血流量=eGFRの激減
- 尿蛋白量が急増
- 血尿の合併
- 発熱や炎症反応増加
- 血性蛋白・アルブミン量低下
専門施設に依頼する事項
- 腎生検による確定診断
- ステロイド・免疫抑制剤治療
- 短期~長期腎代替療法導入
腎臓病の腎機能低下 加齢による自然経過 vs 原疾患
加齢だけでも腎機能は低下しますが、高血圧や糖尿病では低下スピードが速くなります。疾患コントロールが悪い場合や、喫煙習慣や高脂血症が併存すれば、さらに低下スピードが速くなり、腎機能が廃絶となれば、透析導入となります。
高血圧
糖尿病
Anticlockwisemodel 残された腎機能 eGFR
120点満点の腎機能とすると、残りどれくらいでしょうか?
Long term eGFR plot
腎機能の指標であるeGFR(mL/min/1.73m2)は、絶対的な値ではなく、普段から変動しています。そのため、短期間(1~2年間程度)のeGFRの観察では観察期間のeGFR低下量がeGFR変動幅に埋もれ、腎予後不良症例を見逃しやすくなります。得られるすべてのeGFRの長期推移が一括表示できれば、中長期的な未来の透析導入リスクをより評価できる事になるでしょう。
リスクコントロールと治療
腎臓病と診断されたら、将来の透析導入を可能な限り回避する、あるいは合併しやすい心臓病や脳卒中のリスクを最小化するため、原因となりうる全ての要因を改善する必要があります。
- 高血圧、糖尿病、脂質異常、尿酸値を厳格管理
- 喫煙 → 禁煙
- 肥満 → 減量
- 蛋白尿 → 極力少なくする
- 貧血 → 鉄補充やESA/HIF-PH製剤での対応
- 電解質 → 特にカリウムの適正化
また、急速進行性糸球体腎炎合併やネフローゼ症候群発症への注視が必要です。
特に蛋白尿
蛋白尿は、腎機能廃絶と透析導入に強力に関連しますので、定期的な尿蛋白定量検査とその軽減を目指す必要があります。具体的な目標として・・・
- 尿蛋白クレアチニン0.5g/gCr未満
- 尿アルブミンクレアチニン300mg/gCr未満
- ベースラインに対して、30%以上の低下
蛋白尿軽減のために、キーとなる中心薬剤
“血圧”と“カリウム値”を適正化する事に留意して、キー薬剤を使いこなしながら管理します。
SGLT2阻害剤
慢性腎臓病における治療剤=SGLT2阻害剤には腎障害進展抑止作用が示されることから、適応を限定すれば積極的使用が推奨される。
原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3 糖尿病 尿アルブミン定量
(mg/日)
尿アルブミン/Cr比
(mg/gCr)正常
30未満微量
アルブミン尿
30~299顕性
アルブミン尿
300以上高血圧
腎炎
多発性囊胞腎
腎移植
不明
その他尿蛋白定量
(g/日)
尿蛋白/Cr比
(g/gCr)正常
0.15未満軽度蛋白尿
0.15~0.49高度蛋白尿
0.50以上GFR区分
(mL/分/
1.73㎡)G1 正常または
高値
≧90G2 正常または
軽度低下
60~89G3a 軽度~
中等度低下
45~59G3b 中等度~
高度低下
30~44G4 高度低下
15~29G5 末期腎不全
(ESKD)
<15■ 糖尿病性腎臓病 ■ 慢性腎臓病 ■ 慢性腎臓病
糖尿病~SGLT2阻害薬によって何年間透析導入を延期できるか?
CKD治療におけるSGLT2阻害薬の使用に関するフローチャート
- ・eGFR15ml/分/1.73㎡未満は新規に開始しない
- ・継続投与してeGFR15ml/分/㎡となった場合には、注意しながら継続する
- ・投与後にeGFR initial dipを認めることがあるため、早期(2週間~2ヶ月程度)にeGFRを再評価することが望ましい
- ・糖尿病非合併CKDへの投与前に原疾患の治療を考慮する
- 心臓病~貧血・鉄欠乏~腎臓病
-
心臓病と腎臓病は密接に関連しており、貧血が増悪因子となります。病態の第一のきっかけはいずれにせよ、この3者は必ず密接に連動して増悪します。鉄分は積極的に補充しておくほうが良いです。
心不全患者における鉄欠乏の診断基準
- 血中フェリチン濃度 100ug/l未満
- 血中フェリチン濃度 100ug-299/l かつ トランスフェリン飽和度20%未満
Eur Heart J.2021
該当すれば、積極的に鉄を補充しましょう。
貧血の診断
- ※1 MDSにおける貧血は、大球性・正球性共に認めれ、網状赤血球数も減少から増加まで必ずしも一定しない。骨髄異形成症候群では白血球や血小板に異常を認めることが多いため、この点がMDSを疑う一助になる。診断には骨髄検査が必須であるため、疑った場合は血液内科へのコンサルトを考慮する。
- ※2 一定程度のEPO増加が認められる症例では、腎性貧血以外の貧血疾患の関与も念頭におく。ただし腎性貧血を否定するものではない。
腎性貧血の治療
- 鉄剤
- エリスロポエチン製剤注射
- HIF-プロリン水酸化酵素阻害薬 ダーブロック®
- 輸血
保存期CKD患者の貧血治療
- 鉄剤
- ESA製剤/HIF-PH阻害剤
- ※TSAT(トランスフェリン飽和度)=Fe/TIBC
- 急性腎障害~
Acute Kidney Injury:AKI -
“腎臓病”として定期的に外来管理されている患者さんに対しては、特に下記の項目に注意が必要です。
- 夏場の脱水
- 鎮痛剤(NSAIDs)+利尿剤+降圧剤(ACEi/ARB)の組み合わせ。
特に、ロキソニンやボルタレンなどの鎮痛剤は可能な限り服用を避けて下さい。
心臓病患者さんでは、降圧剤(ACEi/ARB)+利尿剤(MRA)は重要な薬剤として特に頻繁に処方されますが、その都度の全身状態により、調節が必要です。