循環器CARDIOVASCULAR
以下のような事がありませんか?
- 動悸や脈が飛ぶ症状がある
- 足の浮腫みがある
- 動くと胸が締め付けられる
- 呼吸がぜぇぜぇするときがある
- 検診で心電図や胸部X線の異常を指摘された
早目に医療機関へ相談しましょう。
循環器内科では心臓の病気を診療します。高血圧・弁膜症・不整脈・心筋梗塞・狭心症などに対する予防と治療を行います。12誘導心電図、胸部X線、心・頸動脈・下肢静脈エコー、ホルター心電図、院内至急検査でのトロポニン・NT pro BNP・Dダイマー評価を行いながら、治療を最適化しています。
緊急時は分・時間単位で病態が大きく変化するため、迅速な判断と同時進行の治療が要求されます。緊急時以外は、年単位にわたるリスクコントロールによる予防が重要となります。
つまり、“有事か?” “平時か?”
時間価値と流れ(シェーマ)
その①
有事(急性冠動脈症候群・慢性心不全増悪・不整脈緊急etc ) か?
Door to Baloon (患者さんが病院についてから風船治療に至るまでの時間)の重要性を常に意識して対応する。
その②
平時は、リスクコントロール 糖尿病、高脂血症の改善、高血圧や心不全、不整脈のコントロール
- 高血圧
-
全高血圧症例の約80%が、しっかり降圧できていない
高血圧 治療目標
診察室血圧 家庭血圧 ○75歳未満
○脳血管障害
※両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし
○冠動脈疾患
※狭心症・心筋梗塞既往
○慢性腎臓病
※尿蛋白陽性
○糖尿病
○抗血栓療法< 130/80 < 125/75 ○75歳以上
○血管障害
※両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞ありまたは未評価
○慢性腎臓病
※尿蛋白陰性脳< 140/90 < 135/85 日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019
血圧の分類
血糖分類 正常高値血圧
130〜139/
85〜89mmHgⅠ度高血圧
140~159/
90〜99mmHgⅡ度高血圧
160〜179/
100〜109mmHgⅢ度高血圧
>180/
>110mmHgリスク第一層
(※危険因子がない)負荷リスクなし 低リスク 中等リスク 高リスク リスク第二層
(糖尿病以外の1・2個の危険因子、メタボリックシンドロームがある)中等リスク 中等リスク 高リスク 高リスク リスク第三層
(糖尿病・慢性腎臓病、臓器損害/心血管病、3個以上の危険因子のいずれかがある)高リスク 高リスク 高リスク 高リスク 適正に降圧して…以下を予防する!
- 脳卒中
- 心不全
- 腎不全 → 腎代替療法(透析)進展を可能な限り抑止
- 認知症 → ボケさせない!
高血圧は 脳卒中、心臓病、腎臓病および大血管疾患 の強力な危険因子であることをまず認識すべきです。高血圧のコントロールは、合併症予防の基礎中の基礎となります。
どの患者さんも、脳卒中で麻痺が出たり、寝たきりとなったり、心不全や腎臓病で日常生活に困難をきたすことを望んでいません。
たかが“高血圧”は確実に蓄積して実害に至り、原疾患いかんによっては加速度的に有害となります。
いかに予防できるか?そしてその進展を防止できるか?が重要です。高血圧は明らかな“認知症”リスクとなる!
→ “ボケ”防止としても血圧は下げる!
中年(65歳未満)でも…なんと高血圧と脳卒中の発症率の関係性 ~血圧は下げましょう!
脳卒中・心血管死亡イベント数に寄与する危険因子
Anticlockwisemodel 残された腎機能 eGFR
コントロール不良の高血圧や心不全では、確実に腎機能が増悪します。
120点満点の腎機能とすると、残りどれくらいでしょうか?Long term eGFR plot
腎機能の指標であるeGFR(mL/min/1.73m2)は、絶対的な値ではなく、普段から変動しています。そのため、短期間(1~2年間程度)のeGFRの観察では観察期間のeGFR低下量がeGFR変動幅に埋もれ、腎予後不良症例を見逃しやすくなります。得られるすべてのeGFRの長期推移が一括表示できれば、中長期的な未来の透析導入リスクをより評価できる事になるでしょう。
降圧目標値(収縮期)
全ての測定時で血圧が125/75未満となることが目標
血圧測定のポイントは以下が重要です。
①起床直後(排尿後)
②就寝直前
この測定ポイントで高ければ...早朝高血圧や夜間高血
→ 心筋梗塞や脳卒中のリスクが明らかに増大します。dipper型 正常
(ディッパー)
早朝高血圧型 異常
(モーニングサージ)
Non-dipper型 異常
(ノンディッパー)
Extreme-dipper型 異常
(エクストリムディッパー)
riser型 異常
(ライザー)
原発性アルドステロン症による高血圧
高血圧と診断された全症例の中で、5%以上が該当し、決して稀な疾患ではありません。副腎という内分泌臓器の病気であり、心脳血管合併症の頻度が高く、手術で根治する可能性もあることから、この疾患は重要です。
特に若年高血圧者や降圧剤を複数使用してもコントロールできない高血圧症例(160/100mmHg以上)は、常に疑うべきです。副腎腫瘍~高血圧や他の代謝疾患、あるいは悪性疾患に関連することがあります。高血圧と診断されたら、まずは腹部エコーで、副腎や腎臓の大きさを評価しましょう。
高血圧と糖尿病
血圧も血糖も互いに、悪く関連して上昇しあう!
血圧が上がれば血糖も上がる!収縮期血圧を 5mmHg 下げれば、糖尿病発症リスクが 11% 下がる!
血圧を下げて、糖尿病も予防しましょう。 - 弁膜症
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心臓は、左心室・左心房・右心室・右心房の4つの部屋に分かれており、それぞれの間にドアのように働き、逆流を防ぐ「弁」があります。心臓弁膜症とは、弁が加齢・感染症・先天的(生まれつき)の問題によってその機能が低下して、狭窄もしくは逆流をきたす病気です。心不全に至る代表疾患です。特に、大動脈弁狭窄症と僧帽弁閉鎖不全症が重要です。
大動脈弁狭窄症
心臓弁膜症の中で、最も重要疾患となる、大動脈弁狭窄症です。意識消失や狭心症のような症状と関連して、突然死に至ることもあります。左室流出路最大血流が、4m/sを超えると、弁置換術の治療選択を考慮しながら管理します。
僧帽弁閉鎖不全症 その① 僧帽弁逸脱症
若年でも手術に至ることが多く、心雑音がある患者さんは注意が必要です。
僧帽弁閉鎖不全症 その② 機能的僧帽弁閉鎖不全症
心臓が大きくなって、僧帽弁輪が引っ張られた結果、閉鎖しきれなくなって逆流しています。左房腔の拡大が顕著です。手術に至りました。
三尖弁閉鎖不全症
慢性心不全の中で、両心不全、右心系拡大が目立つ症例です。三尖弁逆流が高度に認められます。
- 不整脈
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特に、遭遇頻度が高くて、脳梗塞に関連する “心房細動” に対して、積極的に診断するように努力しています。その他の不整脈も、常に“有事か?”それとも“平時か?”つまり、緊急性を意識しながら診療しています。
心房細動になりうるリスク
- 高齢
- 高血圧・糖尿病
- やせ型
- 脳梗塞既往
- 家族歴
- 喫煙・アルコール
- 肥満・睡眠時無呼吸
心房細動の合併症
- 脳塞栓
- 帽弁閉鎖不全に関連した心不全
2つの視点で注意が必要です。
心房細動におけるホルター心電図例
- 狭心症・心筋梗塞
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冠動脈の動脈硬化によって生じた脂肪を含むプラーク・アテロームといわれる粥腫(じゅくしゅ:中にコレステロールを含むかさぶた状のもの)が進展し徐々に冠動脈が狭くなります。
冠動脈が狭くなって、心筋血流量が少なくなった結果、胸部絞扼感や胸部不快などの症状がでる疾患を、狭心症と呼びます。
- 安定狭心症
数か月以上症状が安定している。 - 冠攣縮性狭心症
冠動脈が痙攣して血流が悪くなる。 - 急性冠症候群
粥腫に亀裂が入り、そこに血の塊が生じ、突然冠動脈の流れが悪くなる重症の狭心症のこと。 - 急性心筋梗塞
血の塊で冠動脈が完全につまって、心筋が壊死する病状のこと。重症な心不全や不整脈の原因となり、突然死に至ることもあります。
リスクが高い患者さんでは、平時において、狭心症発症の可能性を常に予測すること、必要時は冠動脈狭窄の程度を検査で評価して血行再建が必要か検討することが重要となります。
- 加齢
- 糖尿病
- 喫煙
- 高血圧
- 高脂血症
- 腎機能障害
- 家族歴
緊急度の高い、急性冠症候群や急性心筋梗塞では、手術可能施設に転送して緊急カテーテル手術となります。
冠動脈CT
狭心症を安全に診断あるいは除外する!
→ 連携施設の新古賀病院で速やかに実行可能です。狭心症らしいか?その可能性は?
狭心症と診断された、あるいは既に狭心症のステント治療既往がある場合、その後の治療は下記のとおりです。
- 血の塊が出来ないように、血をサラサラにする薬を使う、あるいは心臓の負担を下げるβ遮断薬を使用する。
- 厳格に併存リスクコントロールを行う。コレステロールや血圧を下げる、血糖コントロールを良くする、禁煙する…。etc
HBR基準
血をサラサラにする薬の投与スケジュール
- 安定狭心症
- 心不全
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心不全とはなにか
心不全とは、心臓の働きが不十分となったために、“息苦しさ”や“むくみ”がでる状態のことをいいます。
全国の患者数は、今後も増加し、2030年には約120万人に至ると推測されています。我が国における新規心不全発症数推移
2025年 → 新規心不全は、約37万人発症!
心不全とそのリスクの進展ステージ
増加し続ける心不全への対策が急務です。
①早期発見(症状)
- 体重増加や浮腫増加
- 血圧・脈拍・酸素化の悪化
- 胸部X線における心拡大・NT pro BNP値増大
②リスクコントロールと治療
- 高血圧や糖尿病などのリスクコントロール、減塩・禁煙・節酒
- 薬剤の最適化
主役となる四つの薬剤
- 血圧
- 心拍数
- 心房細動の有無
- 腎臓病・高カリウム血症
4つの項目の分析して、投薬を調整する。
心臓の状心不全は、機能低下で大きく2パターンに分類されます。
- 収縮力↓(+拡張能↓) → 動きが悪いか?
- 拡張能↓ → 硬いか?
心不全の結果として、心臓の壁が厚くなるか?心臓そのものが大きくなるか?となります。心臓エコーによる評価が重要です。
拡張能を評価する5項目
- 左室流入血流波形 E. A. E/A
- 僧帽弁輪運動速度 e′
- 平均E/e′
- 左房容積係数
- 最大三尖弁逆流速度
拡張能評価の流れ
左室拡張不全 存在判断のアルゴリズム
左室充満圧推定のアルゴリズム
- 大動脈瘤
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破裂すれば即死することもあり、リスクとなる高血圧、高脂血症、喫煙者、高血圧、高脂血症、糖尿病の患者さんは発症に注意が必要です。
腎動脈遠位に発症した、最大短径50mm以上に増大した腹部大動脈瘤。 - 心臓病と睡眠時無呼吸
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睡眠時無呼吸は、心臓病のリスクが増加するため、早期発見と治療が必要です。
以下のリスクを増大させます。
- 高血圧
- 心房細動
- 心不全
特に、“治療抵抗性の高血圧”と“不整脈=心房細動”と診断された患者さんには、睡眠時無呼吸の検査が必要です。
- 心臓病・貧血・腎臓病
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心臓病と腎臓病は密接に関連しており、貧血が増悪因子となります。病態の第一のきっかけはいずれにせよ、この3者は必ず密接に連動して増悪します。鉄分は積極的に補充しておくほうが良いです。
心不全患者における鉄欠乏の診断基準
- 血中フェリチン濃度 100ug/l未満
- 血中フェリチン濃度 100ug-299/l かつ トランスフェリン飽和度20%未満
Eur Heart J.2021
該当すれば、積極的に鉄を補充しましょう。
貧血の治療
- 鉄剤
- エリスロポエチン製剤注射
- HIF-プロリン水酸化酵素阻害薬 ダーブロック®
- 輸血
- 静脈血栓塞栓症
~下肢静脈血栓と肺塞栓 -
足が浮腫んでいる?それって血栓症?
静脈血栓症とは、飛行機に乗ったときに発生する“エコノミークラス症候群”として、一時期話題になりました。
現在では、飛行機などの特殊状況下で発生するのみでなく、一般的な加齢による下肢の活動度低下や、“がん”疾患そのものにより、あるいは整形外科やがん手術周術期に発生しやすいことがわかっており、その発生数も確実に増加しつつあります。特に、下肢静脈血栓から肺塞栓に至ると致命傷となりえます。予測することも重要であり、Wells scoreによる病歴評価が有名です。治療には血をサラサラにする、DOACという抗凝固剤を使用します。
Wells socre~血栓症の可能性が高いか?
3点以上→高確率、1~2点→中確率、0点→低確率
臨床的特徴 点数 活動性のがん(6ヵ月以内治療や緩和治療を含む) 1 下肢の完全麻痺、不全麻痺あるいは最近のギプス装着による固定 1 臥床安静3日以上または12週以内の全身あるいは部分麻酔を伴う大手術 1 下肢深部静脈分布に添った圧痛 1 下肢全体の腫脹 1 腓腹部(~脛骨粗面の10cm下方)の左右差(3cm以上) 1 症状のある下肢の圧痕性浮腫 1 表在静脈の側副血行路の発達(静脈瘤ではない) 1 深部静脈血栓症の既往 1 深部静脈血栓症と同じくらい可能性のある他の診断がある -2 治療の例 腎機能が保たれている=eGFR30ml/分以上を前提として