心に残る旅の思い出を皆さんに 旅行のプロが語る「旅の楽しみ方」

気軽に旅行を楽しめない日々が続き、人とのつながりや感動を共有することの大切さを感じた人は多かったのではないでしょうか。長年、旅行業務に携わっているさくら交通・常務取締役の大隈清久さんは「旅行は心の癒し。多くの人に家族や友人、地域の人たちと旅行を通して思い出をつくってもらいたい」と話します。

朝倉市屋永で生まれ育ち、地元をこよなく愛する大隈さんは、根っからの旅行好き。人と話すことが大好きで、旅行業界に足を踏み入れて４７年になります。７０歳になった今でも、添乗員として老人会や企業の団体、近くの小学校の修学旅行に同行しています。

添乗員の仕事を「私にぴったりの職業です」ときっぱり。観光中は、長年培った知識や情報をお客様に伝えると喜ばれ、より見分を広めようと「添乗員魂」に火が付くのだそう。「添乗員は知識が豊富でないといけない。そのためには、場数を踏むことが大切。何度も旅先を訪ねて、色々なことを収穫していくことが大事やね」。添乗員の時は、ひと際目立つ黄色の帽子と青いジャンバーを身に着けるのがポリシー。

演歌界の大御所である北島三郎のファンで、好きな曲は「竹」「橋」「川」「男の涙」「まつり」など。「６０歳の時に博多座であった北島三郎公演へ行った際、ステージの途中で北島さんが『今年還暦の方はいますか？』と観客に尋ねて、手を挙げたら自身の『還暦』を歌ってくれたのが嬉しくて。それからファンです」。修学旅行の児童には、「大隈」という名字から「ビッグベア」との愛称で呼んでもらい、すぐに打ち解けるそう。「子供たちに呼んでもらえることが嬉しくて励みになります」と笑顔。

現代では、テレビやインターネットなどで観光地の絶景を目にすることはできますが、「現地に足を運んでみると、自分の想像をはるかに超えるものを見ることができ、五感が刺激されるんですよ」と、旅の魅力を語ります。さらに、「そこに住んでいる地域の方から様々な話を聞くことができたり、新鮮な特産品や旬の味に出合えたり、行った先々でドラマがある」とも。

新型コロナウイルスの影響で多くの人が自粛生活を余儀なくされましたが、最近は「お客様から色々な所へ行きたいという声をよく耳にするようになりました。私はお客様に『何があなたにとって１番幸せですか？』と問いかけるんです。すると、１００人中２～３０人は旅行をして思い出をつくることと答えます。次に物が食べられる時。人によって色々な幸せがあると思うけど、旅行に行きたいって思っている人が多い。旅をすればストレス解消につながったり、心が癒されるからね」

九州のみならず、京都への観光や伊勢神宮への参拝ツアーなども担当する大隈さん。今まで１番大変だった仕事は、徳島県・高知県・愛媛県・香川県の札所を巡拝する四国八十八ヶ所霊場巡りと言います。「１３泊１４日で行きました。お客様と一緒に汗を流しながら、一生懸命歩きましたよ。私の仕事はけっこう歩くことが多いです」。

体力勝負の仕事でもあるため、６６歳から始めた日課があります。仕事で連泊をする日以外は、朝５時半に起きて、仲間と標高３１５メートルの大平山へ登山に出かけるのだそう。「朝の新鮮な空気を吸って、仲間とおしゃべりしながらてくてく歩いて、山頂でラジオ体操をするのが日課。筑紫平野を見下ろしてのラジオ体操は非常に気持ちが良くて、すがすがしい気持ちになれます。そして、朝ごはんの味噌汁は何が入っとっちゃかろうか？なんてことを考えながら、往復２時間かけて帰るんです。ちっちゃかことでも感謝をすれば自ずと日常に幸せを感じます。同時に、今に感謝をするし、健康のありがたみも感じることができます」。登山のおかげで足腰は鍛えられて筋力もつき、小学校の修学旅行に同行する時は、児童に負けない体力を発揮しているそうです。

日々、体力作りに励んでいる大隈さんの健康の秘訣は、暴飲暴食をしないこと。特に脂が多い物や甘いお菓子などは控えるようにしています。「人生７０年ともなると、第一に望むことは元気でいること。家族に心配をかけることがないようにしなければね」。また、心の健康も大切にしており、決して無理はしない、頑張る時は一生懸命に取り組む、人とのおしゃべりをたくさんする、辛い時も笑顔でいることを心掛けて、心と体の健康を保っているそうです。そして「よし、今日も元気に笑って過ごすぞ！しょぼくれたら、いかん！！」と自分に言い聞かせて、一日一日を大切に過ごしていると言います。

今後の目標は、添乗員としてお客様の前に立ち続けていくこと。「亡き母から言われた『常に人に優しくしなさい。人に感謝の心を持ちなさい。どんな時も笑顔、笑顔。一隅を照らせるような人でおらなよ』という言葉を胸に、これからも地域や社会に恩返しをしていきたいです」

常に前向きで活力に溢れている大隈さん。旅行を通じて、お客様の人生に潤いを与えるお手伝いはこれからも続きます。