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モットーは「農業は正直であれ」梨ファンが通う梨農家

クリニック周辺で頑張る人々の姿をインタビュー記事と写真で紹介する「地域の主役たち」。どのような思いやこだわりを持って取り組んでいるのかなどをお伝えしていきます。

 「食欲の秋」。美味しい食べ物が一斉に旬を迎える季節がやってきました。中でも、シャリシャリした食感と口に入れた瞬間溢れ出す果汁がたまらない梨はファンも多いと思います。梨の名産地として長い歴史がある高木で、先祖代々続く梨農園を守っている鳥巣良彦さんを訪ねました。

 

 清らかな水、澄んだ空気、適度な寒暖差に恵まれ、地域の気候風土を最大限に生かした梨は甘くてジューシー。「同じ品種の梨でも地域によって全然違う。この地で作る梨は、どの地域にも負けない美味しさがある」と胸を張ります。

 祖父の代から続く梨農園。幼い頃から家族が働く様子を身近で見て育ち、農園を継ぐことは自然な流れでした。

 

 ご存じの通り、ひとえに梨と言っても「幸水」「豊水」「新高」‥‥など種類は豊富にあります。鳥巣さんの農園でも多くの品種を扱っています。香りや味、食感はそれぞれ異なり、シーズンごとの梨が楽しめます。現在は行っていませんが、以前は園内で梨狩り体験をしていました。そのため、いつ観光客の方が来ても良いようにさまざまな品種の梨を取り入れていたのだそうです。「その時の旬の物を食べて欲しいし、最高な状態の梨を味わってもらいたいという思いから」と話してくれました。

 自然を相手にしているからこそ、決してマニュアル的にできないのが農業。過去の経験や記憶、統計はあっても気候や雨量、災害の有無は毎年変化します。予想できない事態も起こります。「何十年とやってきても、毎年何かしらの疑問は残ってしまう。植物だからすぐに成果が出るわけでもないし、肥料などは最低3年は同じものを使う。同じ品種でも、育て方を変えるだけで味に変化が起こる。自分の舌や周りの人に食べてもらって、どんな変化があって、何が効果的だったのかを探る。農業はどんなこだわりを持って取り組むかが大切だと思う」。

 多くの人から愛される梨。スーパーで重さがずっしりとした物を買って食べたけれど、甘くなかったという経験をしたことはありませんか?そこで、梨の美味しい見分け方を聞いてみました。すると「悪いが、素人じゃなかなか難しいね。大きさが大きいほど美味しいと言う人がいるかもしれないが、私はそうは思わない。大きいのだって小さいのだって、熟期がきている物を見極めて収穫することが大事だから。人間と一緒だよ。背が大きい小さいとかで人のことを決めたりしないでしょ。長年の経験を培った生産者が絶妙な収穫のタイミングを見極められるかが決め手」と鳥巣さん。流通に時間がかかってしまうと味が落ちるので、スーパーで売られている梨の中から当たりを見つけるのは素人にとっては至難の業。身近な果物ですが、奥深い果物です。

 「農家は正直であれ」がモットーの鳥巣さん。農業を通して嬉しかったことを伺うと、久しぶりに農園を訪れた人から「デパートやスーパーで売られてる梨を食べてもイマイチ。やっぱり、ここに来んといけんわ」と言われたことや、道の駅で梨を並べていると、全く知らない方から「ここの梨は当たり外れがない」と声をかけてもらいありがたく思ったことなど、梨を食べた人からの喜びの声を教えてくれました。

 

 「味を騙して売ることは簡単にできるだろうけど、そんなことはしない。梨の味がのっていない時は、来てもらっても売るのを断っている。美味しい梨を食べてもらいたいけん。食べてくれた方からの嬉しい言葉は活力に繋がるし、自分が正直であれば消費者にも気持ちは繋がる。本物をやっぱ食べてもらわなきゃ。誤魔化して売っていたら、農家は長く続かないと思うよ」。鳥巣さんの梨を口にした多くの人の喜びの声は、誠心誠意を尽くす姿から届いているのだと納得しました。

 例年、この時期になれば農園では秋風がそよぎます。しかし、9月以降も残暑が続き、10月に入っても心地良い風を感じたのは数回だけと言います。「気候が変わってきているから、この気候と向き合わないといけないと思っている。これからも、地域の梨である高木梨を守りながら、今以上に色々と考えていかないといけないだろうね」。あらゆる梨を知り尽くしたプロの目が光ります。

 

秀幸農園 福岡県朝倉市黒川2133

2023.11.17
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