日常を彩る植木を届ける生産農家の新たな挑戦
都市の景観、住宅やお庭など日常の空間を彩る植栽。忙しい現代の生活では人々の心を癒してくれる存在としても欠かせまん。そんな植木の生産を手掛ける吉井健二さんを訪問しました。
吉井さんは朝倉市桑原で、米・麦生産、蚕業を生業としていたご実家に生まれ、幼い頃から農業が身近な環境で育ちました。お父様の後を継ぎ、親子で農業に取り組んでいましたが、1970年から始まった国の「減反政策」により、農地の一部で植木の生産を始めます。
本格的に植木生産に取り組んだのは30歳の頃。これからの業界を担う地域一帯の植木生産者が集う部会に所属し、活動を始めます。「結婚して子供もできて、やっぱ頑張らないかんなっちゅう気持ちから」と吉井さん。
2ヶ月に一度会合を開き、メンバー同士で情報を共有しながら、技術の向上に励むなど、とても勢いがあったといいます。「ちょうどその頃またバブルやったわけですね。もう作れば作るだけ生活が豊かになって、気持ち的にも豊かになる。みんな元気がよかった。みんな頑張りよるけん、自分も頑張ろうちゅう意識がどんどん強くなった」と当時を振り返ります。
それから40年近く、数多くの植木を生産し、消費者の元へ届けてきました。現在吉井さんが管理する広大な敷地には、低木から高木、近年人気のロックガーデンで使用されるアガベなど剪定不要の植物など、多種多様な植栽がずらりと並んでいます。
植木は出荷までに3〜4年ほどかかるといいます。植える木を選び、種を蒔き、挿し木をし、ひとつひとつ時間と手間をかけて育てます。中でも難しいのが種類選び。同業者とコミュニケーションを取りながら、数年先の市場ニーズを考え、植える木の種類を選びます。必ずしも人気が出るわけではなく、数年後需要がなくなってしまうものも。過去には植木を掘り起こして全部燃やして処分したこともあるそう。「数年先を見据えながら作って、その判断が正しかったときは嬉しい」と吉井さん。
一番のやりがいは消費者からの喜びの声。「消費者の方が庭木を植えて気持ちが和やかになったとか、褒め言葉をもらうと、やっぱり気持ちがいいな。また作ろうっちゅう気持ちになりますね」と仕事への想いを教えてくれました。
近年の問題は後継者不足とニーズの変化なのだそう。「昔はそれこそ公共緑化が盛ん。高速道路の中央分離帯にズラーっと植えたりしたけど、もうそういったことはないですね。もう今はそういった時代ちゅうかね」
そんな中、販路拡大のため、吉井さんは3年ほど前から新しい取り組みを始めました。それはインターネットでの植木販売。「息子に手伝ってもらって、フリマサイトに出品したら売れてね」。
現在はサイトを使いこなし、出品から出荷まで自身で対応し、消費者の元へ届けています。「植木は段ボールの調整が大変だけどね。コメントを見たら、やっぱり嬉しくなります。お客さんの喜びの声が励みになる」とにこやかに語ってくれました。サイトを見て、遠方からわざわざ吉井さんの植木生産畑に足を運んでくる方もいるそうです。「個人的に来られた方には庭木のことや育て方などアドバイスします」と吉井さん。
今後の目標は、これからどのような植木が人気があるのか調査も兼ねて、色々な種類の植木を作ってインターネットで販売してみたいそう。新しい挑戦はまだまだ続きます。
そんな吉井さんの元気の源は血糖値を上げない食事。「やっぱ食事をするときは、血糖値が急に上がらないように1番最初に野菜を食べるっちゅうことですね。あと白米より玄米。でもやっぱ自分は肉体労働やけんですね。肉・魚を食べんと体力がついていかん」とにっこり笑顔。吉井さんが愛情込めて育てた暮らしの風景を彩る植栽たちは、今日もどこかで誰かの心を元気にしています。