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隠れ家的フレンチレストランから 生まれる妥協のない一皿

朝倉市甘木の住宅街の中にひっそりと佇むレストラン「ざっくばらん」。一軒家の一角に併設されたアットホームな雰囲気の店内で楽しめるのは、ホテル出身のオーナーシェフ大庭吉登(おおば よしと)さんが自家製の有機野菜や地元の素材を使い、手間ひまかけて作るフレンチベースの創作料理。ここだけでしか味わえない料理の豊かさは、若者からシニア世代まで多くの人を魅了しています。

大庭さんは甘木生まれ、甘木育ち。高校卒業後、「いずれは自分のレストランを持ちたい」という夢を胸に料理の道へと進みます。始まりは、東京の5つ星ホテル「ホテルニューオータニ」。調理を希望するも、入社後すぐ17階にあるラウンジ「ブルースカイ」に配属され、ウェイターとしてきめ細かな指導を受けます。「お客様がご存じないことに対し、恥を欠かせないように受け答えするなど、接客において相当勉強になりましたね」と当時を振り返ります。

入社半年ほど経った頃、大庭さんは『調理場に入れてもらえないですか?』と厨房のシェフに頼み込むもあえなく断られてしまいます。何度か挑戦するも諦めきれず、当時可愛がってくれていたという16階メインレストランのシェフに相談。すると、その熱心な想いは届き、1階レストランの厨房が用意されます。大庭さんは、料理人としてのスタートとなった仕込み場で、野菜の切り方、皮の剥き方、ソースの作り方、包丁の使い方、フライパンの振り方など、料理の基礎を徹底的に磨いていきました。

その後、「ニューオータニガーデンタワー」がオープンし、その40階に位置するフランス人オーナーシェフが手掛ける話題のレストランに配属。「とにかく厳しかった。間違ったことしたら、後ろからお玉が飛んできたり、熱い鍋を洗ったりね。体で覚えさせるっていうんですかね。実際体験から多く学びました」。厨房で厳しい修行に励む日々が続き、3年ほど経ったある日のこと。転職を考えるきっかけとなったのは、ある先輩の一言でした。
「10年ほど勤務していた先輩が『自分なりの料理ができるようになった』って聞いたんですよ。“自分の”ではなく、“自分なり”ですよ。ホテルにいたら、大体ワンセクションに1〜3年ぐらいいるんですよ。それを回って、だんだん上の方に行くんですけどね。煮る・焼くの工程に辿り着くまで10年くらいかかるんですね」


将来は自分の店を持つことを夢に見ていた大庭さんにとって、その言葉は重くのしかかります。24歳の頃、5年ほど務めた「ホテルニューオータニ」を辞め、赤坂にあるイタリアン人オーナーシェフのレストランへ転職します。料理のジャンルについてはあまりこだわりはなかったという大庭さん、結果東京では15年ほど料理の世界で、さまざまな経験を重ねました。

転機となったのは、32歳の頃。やはり「自分の店を持ちたい」と地元福岡県に戻ります。はじめはホテルのレストランに就職するも、多様な文化が育つ東京と地方の仕事のやり方、考え方の違いに戸惑います。「経営者とシェフでは原価の予算などで価値観が違ってきたりするんですよ。自分の場合は、材料も自分で選んでいきたいし、手作りのものを提供したいんですよね」。

 


その後、久留米で自身のお店を経営したのち、地元甘木に戻り、2008年に「ざっくばらん」をオープン。「ざっくりとか適当とか意味したつもりだったけど、実際は包み隠さず、すべてさらけ出すみたいな意味があるみたいですね」。
「ざっくばらん」で堪能できるのは、店の名前のように、素材の持つすべての力を最大限に引き出す調理法で手間ひまかけて作られたフレンチベースの創作料理。使う食材は自家菜園で育てた野菜や厳選した地元の旬のもの。手頃に楽しめるハンバーグやシチューのセット、オードブルからデザートまで堪能できるコースなど、多彩なメニューを楽しめます。

「インスタントは全く使いません。例えばソースなどで使うトマトの水煮は、新鮮なトマトを使った自家製の水煮を使います。基本的に砂糖も使わず、素材の持つ甘みと旨味を大事にしています」。こだわり尽くして提供される彩り豊かなひと皿ひと皿は、大庭さんの知識や経験、技術から生まれる賜物。これまで歩んできた人生のピースをちりばめたような、まさに「自分の料理、自分の味」なのです。


そんなシェフの真骨頂とも言える逸品が「オニオングラタンスープ」。厳選した玉ねぎをゆっくり時間をかけてのばし、自家製のチキンブイヨンと塩でシンプルに味付けし、自家製パンとチーズで仕上げたもの。秘訣は「沸騰させないように丁寧にのばしていくこと。10キロの玉ねぎが1.4キロくらいになりますよ」。素材の力を最大限に活かしたさすがのおいしさは、お客様に評判です。

「料理は一生勉強」という大庭さんが今後挑戦したいことは、生パスタ。「一度セモリナ粉で作ってみたんですが、子供たちに『なんかうどんやん』って言われたんで。まだ自信ない」とニッコリ。「自分で自信持ってお客様にお金もらって出せるようになるには、3年くらいはかかりますよ」。厳しい現場で経験を積んできた大庭さんだからこその言葉は、とても響きます。

とどまる事なく、歩み続ける大庭さんの健康法は、食事と若干の運動。「お酒は好きだけど、仕込みで朝が早いのもあって、晩酌をやめたんですよ。食べる量も3分の1くらいに減らしました。あとはなるべく階段を登るとか、日常生活に若干の運動を取り入れること。店を長く続けたいので、なるべく自分自身をいい状態に保てるようにしていきたいですね」。
大庭さんがこだわり尽くした美味しいおもてなしを味わいに、ぜひ一度足を運んでみてください。

ざっくばらん

〒838-0068 福岡県朝倉市甘木647−8
0946210518

2024.05.28