時代を超えて変わらない味 ハトマメ屋
クリニック周辺で頑張る人々の姿をインタビュー記事と写真で紹介する「地域の主役たち」。どのような思いやこだわりを持って取り組んでいるのかなどをお伝えしていきます。
朝倉市で生まれ育った人にとって馴染みのお菓子屋と言えば、明治18年創業の「ハトマメ屋」ではないでしょうか。可愛らしい鳩のデザインに、子供の頃の記憶がよみがえる人もいるのでは。新しいお菓子作りに挑戦しながら、変わらない味を守り続けている4代目の仲山昌成さんを訪ねました。
店内を見渡すと、和・洋・生菓子などバリエーション豊かなお菓子がずらり。中でも目を引くのは、ハトマメ屋の原点である看板商品の「金トキ豆ハトマメ」と「金トキ豆ソバマメ」。パッケージがレトロで、思わず「懐かしい」と手に取ってしまいます。それもそのはず、このパッケージデザインは昭和初期からとのこと。
袋を開けると、お豆のような形のハトマメがわんさか入っています。カリッとした歯ごたえで懐かしい甘さが広がり、もう1粒、もう1粒‥‥ついつい手が出て止まりません‥‥。筑後産小麦粉と砂糖で作られたシンプルな味は幅広い世代に好まれるはずです。中に入った意味深?不思議な?おみくじも楽しみの一つになります。
お店の要でもある作業場は湯気が立ち上り、ドラム式の機械やローラーなどが並んでいました。いくつもある大きなザルの中には、出来立てほやほやのハトマメが盛りだくさん。製法を伺うと「昔から変わらない製法なんですよ」と仲山さん。ハトマメは元々、仲山さんの曽祖父である初代の作兵衛さんが「子供たちにひもじい思いをさせないように」と考えたのだそう。その後、戦争を経験した祖父の二代目・昌人さんが「みんながお菓子を食べられないような世の中にしてはならない」と作り上げました。そして、父の三代目・良幹さんが昔話でお馴染みの金太郎が描かれた小袋に詰めることを考え、おみくじを導入したそうです。「ハトマメ」には、いつまでも平和であってほしいという願いが込められています。
小麦粉を砂糖水で練り、生地をのばしてサイコロ状に切断し、丸めながら焼き上げていきます。その後、大きな機械で回しながら砂糖蜜を染み込ませて完成です。「湿気や気温、天候など、季節によって生地の状態は変わるので、微調整が難しいところ。生地が上手くいかなかったら、成形も上手くいかない。いびつな形になったり、角ができてしまうんです。あんばいが大切」。練った生地を触ることにより、具合いを見極めながら、仕上げるー。長年の経験を培った職人だからこそ成せる技だと感じました。
家業を継ぐまでは、デパート勤務のサラリーマンだった仲山さん。長男ということもあり、会社を辞めましたが「子供服売り場の責任者をしていたので、商売の基本は学ぶことができ、身に付いていました。その時、卸業を主体にしていたハトマメ屋でしたが、製造から販売へと考え、今のお店を立ち上げたんです」。
ハトマメだけではなく、さまざまなお菓子に挑戦し、時代にマッチした商品を開発することで現在のハトマメ屋に成長しました。「私のモットーは新しいことに挑戦することです。新しいことを始める時って、ワクワクするでしょう?その気持ちを忘れたらいけないなって思っています。失敗することも多いけど、受け継いだお菓子を守りながら、新しく変えていくっていうのも継いだ人間には必要なことだと感じています」。
最後に、健康法を伺うと「体が資本の仕事なので、よく食べてよく寝ること。家族のためにもね」と教えてくれました。目を細めながら、幼い娘さんの話をする仲山さんの笑顔が印象に残りました。
時代を超えて愛されているハトマメ屋のお菓子。おやつに、手土産におすすめですよ。
◆ハトマメ屋
〒838-1302 福岡県朝倉市宮野1910−3